膵癌 GEST

Randomized Phase III Study of Gemcitabine Plus S-1, S-1 Alone, or Gemcitabine Alone in Patients With Locally Advanced and Metastatic Pancreatic Cancer in Japan and Taiwan: GEST Study.

Ueno H, Ioka T, Ikeda M, et al. J Clin Oncol. 2013 ;31(13):1640-8 [PubMed]

対象疾患 治療ライン 研究の相 主要評価項目 実施地域 日本の参加
膵癌 一次治療 第3相 全生存期間 日本・台湾 あり

試験名 :GEST

レジメン:GEM+S-1 vs GEM vs S-1

登録期間:2007年7月〜2009年10月

背景

進行膵癌に対してはゲムシタビン(GEM)単剤療法が標準治療であり、様々な第2相試験において有望とされた治療があったが、本試験が行われていた当時、第3相試験においてGEM単剤に優越性を示した治療はGEM+erlotinibのみであり、かつ、その上乗せ効果はわずかなものであった。
第2相試験において、S-1単剤およびGEM+S-1療法(GS)の有効性が示唆されていた。本試験は、全生存期間において、GEM単剤に対する、S-1単剤の非劣性と、GSの優越性を検証するために行われた。

シェーマ

統計学的事項

主要評価項目:全生存期間

本試験はGEM群を対照として、全生存期間において、S-1群の非劣性と、GS群の優越性を検証する3群試験として設計された。生存期間中央値は、GEM群が7.5ヶ月、S-1群が8.0ヶ月、GS群が10.5ヶ月と見積もられた。試験全体の片側α=0.025とし、非劣性・優越性ともにα=0.0125とした。
GSの優越性はlog-rank testで検定され、S-1の非劣性はCoxハザードモデルで両側97.5%の信頼区間で検定された。S-1の非劣性マージンは1.33に設定された。
当初の計画では検出力80%、登録期間3年、追跡期間2年として、600例との登録が必要と設定されていた。しかし、症例登録が予定よりも早く進んだため、検出力を90%として750例を目標登録症例数としてプロトコール変更が行われた。最終的に680イベントが発生した後に最終解析が行われた。

試験結果:

  • 2007年7月から2009年10月、日本、台湾の75施設で834例が登録された。
  • 2例は登録後同意撤回があり、832例に対し、解析が行われた。
  • データカットオフは、2010年7月であり、観察期間中央値は、18.4ヶ月であった。
  • 患者背景に大きな隔たりはなかったが、PS1はGS群にやや多く、CA19-9はGEM群で高値であった。
1. 全生存期間(主要評価項目)
  中央値 95%信頼区間
GEM+S-1(n=277) 10.1ヶ月 9.0-11.2
GEM(n=277) 8.8ヶ月 8.0-9.7
S-1(n=280) 9.7ヶ月 7.6-10.8
2. 無増悪生存期間
  中央値 95%信頼区間
GEM+S-1(n=277) 5.7ヶ月 5.4-6.7
GEM(n=277) 4.1ヶ月 3.0-4.4
S-1(n=280) 3.8ヶ月 2.9-4.2
3. 奏効割合
  奏効割合 95%信頼区間
GEM+S-1(n=277) 29.3% 23.7-35.5
GEM(n=277) 13.3% 9.3-18.2
S-1(n=280) 21.0% 16.1-26.6
4. 病勢制御割合
  病勢制御割合 95%信頼区間
GEM+S-1(n=277) 71.5% 65.4-77.1
GEM(n=277) 62.7% 56.2-68.8
S-1(n=280) 63.3% 57.0-69.3
5. 有害事象(CTCAE ver.3.0)
  GEM (n=273) S-1 (n=272) GS (n=267)
  Grade 3以上 Grade 3以上 Grade 3以上
好中球数減少 51 (18.7%) 10 (3.7%) 101 (37.8%)
白血球減少 112 (41.0%) 24 (8.8%) 166 (62.2%)
血小板数減少 30 (11.0%) 4 (1.5%) 46 (17.2%)
貧血 39 (14.3%) 26 (9.6%) 46 (17.2%)
疲労 10 (3.7%) 18 (6.6%) 13 (4.9%)
皮疹 2 (0.7%) 2 (0.7%) 11 (4.1%)
食欲不振 20 (7.3%) 31 (11.4%) 25 (9.4%)
下痢 3 (1.1%) 15 (5.5%) 12 (4.5%)
口内炎 0 (0.0%) 2 (0.7%) 6 (2.2%)
嘔気 5 (1.8%) 5 (1.8%) 12 (4.5%)
嘔吐 2 (0.7%) 4 (1.5%) 12 (4.5%)
発熱性好中球減少 1 (0.4%) 1 (0.4%) 5 (1.9%)
肺臓炎 5 (1.8%) 0 (0.0%) 2 (0.7%)
結語
切除不能局所進行もしくは遠隔転移を有する膵癌に対して、全生存期間におけるS-1単剤のGEM単剤に対する非劣性が証明され、忍容性も良好で、経口投与という利便性も認められた。GS療法の優越性は認められなかった。
執筆:北海道大学 特任助教 川本 泰之 先生
監修:神奈川県立がんセンター 消化器内科(肝胆膵) 部長 上野 誠 先生

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