膵癌 (Gemcitabine and Cisplatin With or Without Veliparib)

Randomized, Multicenter, Phase II Trial of Gemcitabine and Cisplatin With or Without Veliparib in Patients With Pancreas Adenocarcinoma and a Germline BRCA/PALB2 Mutation.

O’Reilly EM, Lee JW, Zalupski M, et al. Journal of Clinical Oncology. 2020;38(13):1378-88. [PubMed]

対象疾患 治療ライン 研究の相 主要評価項目 実施地域 日本の参加
生殖細胞系BRCA/PALB2変異を持つ
切除不能再発膵臓がん
一次治療 第2相 奏効割合 国際 なし

試験名 :なし

レジメン:ゲムシタビン+シスプラチン±Veliparib

登録期間:2014年1月〜 2018年11月

背景

膵癌の5-9%に生殖細胞系列BRCA/PALB2変異を認めることが知られている。BRCA変異を有する膵癌は、プラチナレジメンの有効性が期待されるとともに、POLO Study試験ではプラチナレジメン奏効中の維持療法としてPARP阻害薬であるオラパリブの有効性が示されている。
さらにBRCA/PALB2変異を認める膵癌に対するゲムシタビン+シスプラチン+Veliparib療法が第1b相試験において高い奏効割合と病勢制御割合を示し、生存期間中央値でも23.3ヶ月と良好な成績が示された。
今回、PARP阻害薬とプラチナレジメンの併用療法の有効性を検討する第2相試験として本試験が実施された。

シェーマ

統計学的事項

主要評価項目:

閾値奏効割合を10%、期待奏効割合を30%とし、αエラーを両側10%、検出力90%としてサンプルサイズの算出が行われた。
それぞれの治療群において、第一段階としてそれぞれ16人の治療が行われ、2人以上の奏効が得られたら、さらに9人の登録がおこなわれ、25人の登録の中で5人以上の奏効を期待した。

試験結果:

  • 2014年1月~2018年11月に52人の患者登録が行われ、3か国6施設が参加した。2019年7月31日にデータカットオフが行われた。
  • GC療法群に割り当てられた2名の患者が治療開始を拒否した。
1. 奏効割合(主要評価項目)
  中央値 p=0.55
GC療法+Veliparib群 74.1%
GC療法群 65.2%
2. 病勢制御割合
  中央値 p=0.02
GC療法+Veliparib群 100%
GC療法群 78.3%
3. 無増悪生存期間
  中央値 95%信頼区間 p=0.73
GC療法+Veliparib群 10.1ヶ月 (6.7‐11.5ヶ月)
GC療法群 9.7ヶ月 (4.2‐13.6ヶ月)
4. 全生存期間
  中央値 95%信頼区間 p=0.60
GC療法+Veliparib群 15.5ヶ月 (12.2‐24.3ヶ月)
GC療法群 16.4ヶ月 (11.7‐23.4ヶ月)
5. 有害事象

≪血液毒性≫

  GC療法+Veliparib群 (N=27) GC療法群(N=23)
  Grade 1 Grade 2 Grade 3 Grade 4 Grade 1 Grade 2 Grade 3 Grade 4
貧血 3(11%) 7(26%) 13(48%) 1(4%) 4(17%) 10(43%) 8(35%)
白血球減少 6(22%) 6(22%) 7(26%) 5(22%) 10(43%) 1(4%)
好中球減少 2(7%) 5(19%) 11(41%) 2(7%) 6(26%) 7(30%)
FN* 1(4%)
リンパ球減少 1(4%) 2(7%) 3(11%) 2(9%) 2(9%) 4(17%)
血小板減少 5(19%) 3(11%) 9(33%) 6(22%) 10(43%) 4(17%) 2(9%)
全体 17 23 44 9 21 32 22

*FN:Febrile Neutropenia(発熱時好中球減少)

≪非血液毒性≫

  GC療法+Veliparib群 (N=27) GC療法群(N=23)
  Grade 2 Grade 3 Grade 4 Grade 2 Grade 3 Grade 4
高血圧 1 3 2
食欲不振 - 2
膨満感 2 - -
便秘 3 2 5 1
下痢 1
消化管出血 2
吐き気 8 3
口内炎 1
嘔吐 2 1
高血糖 6 5 7 3 1
低血糖 1
高マグネシウム 1
低マグネシウム 2 3 1
低アルブミン 2 4
低カルシウム 3 2 1
低カリウム 2 1 2 1
低ナトリウム 3 2
低リン 3 1
胆道感染 1 2 2
感染 4 1
敗血症 1 1
ALP上昇 7 2 2 3
ALT上昇 1 4 5 3
AST上昇 3 1 1 1
ビリルビン上昇 1 3 1 1
勃起不全 1
聴力障害 1
末梢神経障害 2 1 1
けいれん発作 1
失神 1 1
腹痛 5 2 6 1
疼痛 4 2
末梢性肺炎 1
上気道炎 3 1
深部静脈血栓症 5
肺塞栓 2 1 1
詳細不明血栓 2 2
結語
  • GC療法は生殖細胞系BRCA/PALB2変異を有する膵癌において効果的であった。
  • GC療法+Veliparibの併用療法はGC療法に対する上乗せ効果は示されなかった。
  • GC療法+Veliparibの併用療法はGC療法よりも血液毒性の頻度が多く認められた。
執筆:国立がん研究センター中央病院 肝胆膵内科 医員 丸木 雄太 先生
監修:神奈川県立がんセンター病院 消化器内科 肝胆膵 部長 上野 誠 先生

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