肺癌 REVEL

Ramucirumab plus docetaxel versus placebo plus docetaxel for second-line treatment of stage IV non-small-cell lung cancer after disease progression on platinum-based therapy (REVEL): a multicentre, double-blind, randomised phase 3 trial

Garon E, Ciuleanu T, Arrieta O, et al. Lancet. 2014; 384(9944):665-73. [PubMed]

対象疾患 治療ライン 研究の相 主要評価項目 実施地域 日本の参加
非小細胞肺癌 二次治療 第3相 全生存期間 世界 なし

試験名 :プラチナ併用療法後に増悪したⅣ期非小細胞肺癌におけるラムシルマブ+ドセタキセル vs ドセタキセルの多施設二重盲検比ランダム化第3相比較試験(REVEL試験)

レジメン:RAM+DOC vs DOC

登録期間:2010年12月~2013年1月

背景

Ⅳ期非小細胞肺癌の二次治療として承認されていたドセタキセル(DOC)とペメトレキセドの奏効割合は10%に満たず、無増悪生存期間 (PFS) 中央値は4カ月未満、生存期間 (OS) 中央値も7-9カ月と効果は満足すべきものではなかった。
血管新生阻害剤は、腫瘍の血管新生を阻害することで抗腫瘍効果を発揮する抗がん剤であり、すでに抗血管内皮増殖因子 (VEGF) 抗体であるベバシズマブの進行期非扁平上皮肺癌に対する有効性が示されている。ラムシルマブ(RAM)は血管内皮増殖因子受容体-2 (VEGFR-2) に対するヒト型IgG1モノクローナル抗体であり、VEGFR-2の細胞外ドメインに高い親和性で特異的に結合し、VEGFリガンドが受容体に結合することを阻害する血管新生阻害剤である。
本試験は、プラチナ併用療法既治療のⅣ期非小細胞肺癌の二次治療における、RAM+DOC併用療法のDOC単剤に対するOSの優越性を検証するための多施設二重盲検比ランダム化第3相比較試験である。

シェーマ

※DOCの投与量について:発熱性好中球減少症が東アジア(台湾、韓国)で多くみられたため、この地域でのDOCの使用量は75㎎/m2から60㎎/m2に減量された。
※層別化因子:PS、性別、前治療の維持療法の有無、地域(東アジアvsその他の地域)

統計学的事項

主要評価項目:OS
副次的評価項目:PFS、奏効割合

DOC群を対照として、RAM+DOC群のOSのハザード比 (HR) が0.816となる(OS中央値; RAM+DOC群:9.2ヵ月、DOC群:7.5ヵ月)と仮定した。これを片側α 0.025、検出力85%で示すためには869の死亡イベントが必要と計算され、打ち切りを考慮して1242例の登録が計画された。
また主要評価項目、副次的評価項目の解析にはGate-Keeping法を用い、全体のtypeⅠエラーが両側α=0.05となるように制御した。
OSの有意差が示されればPFSについて解析し、PFSに有意差が示されれば奏効割合について解析するように計画された。

試験結果:

  • 2010年12月3日から2013年1月24日の間に1253名の患者がランダム化され、628名がRAM+DOC群に、625名がDOC群に割り付けられた。
  • OSの中央値はRAM+DOC群で10.5ヵ月、DOC群で9.1ヵ月であり、HR 0.86(95%CI 0.75-0.98,P=0.023)とRAM+DOC群の優越性が示された。
  • サブグループ解析では組織型(非扁平上皮癌、扁平上皮癌)に関わらず、RAM+DOC群でOSを延長する傾向が示された。
  • Gate-Keeping法に基づきPFS、次いで奏効割合についても解析を行い、PFSと奏効割合ともにRAM+DOC群で有意差をもって良好であった。
  • RAM+DOC群の33%、DOC群の23%において減量が必要な有害事象の発現が認められ、その原因は好中球減少(12% vs 9%)、疲労(9% vs 6%)、発熱性好中球減少症(7% vs 5%)であった。G-CSF製剤やGM-CSFの使用頻度は両群で有意差はなかった(42% vs 37%)。
  • 発熱性好中球減少症が東アジア(台湾と韓国)で多くみられたため、2012年5月から新規登録患者へのDOCの投与量が75㎎/m2から60㎎/m2に減量された。減量により、東アジアにおける発熱性好中球減少症はRAM+DOC群で44%から0%に、DOC群で12%から8%に減少した。
  • 全グレードの出血関連の副作用はRAM+DOC群で多かった(29% vs 15%)が、Grade3以上の出血の頻度に有意差はなかった。
1. 全生存期間(主要評価項目)
  中央値 HR 0.86         
(95%CI, 0.75-0.98, P=0.023)
RAM+DOC(n=628) 10.5ヵ月
DOC(n=625) 9.1ヵ月
2. 無増悪生存期間
  中央値 HR 0.76         
(95%CI, 0.68-0.86, P<0.0001)
RAM+DOC(n=628) 4.5ヵ月
DOC(n=625) 3.0ヵ月
3. 奏効割合
  奏効割合 病勢制御割合 奏効割合
P<0.001
RAM+DOC(n=628) 23% 64%
DOC(n=625) 14% 53%
4. 有害事象(NCI-CTCAE ver4.0)
  RAM+DOC(n=627) DOC(n=618)
  全グレード グレード≧3 全グレード グレード≧3
全有害事象 98% 79% 95% 71%
 疲労 55% 14% 49% 10%
 食欲不振 29% 2% 25% 1%
 下痢 32% 5% 27% 3%
 悪心 27% 1% 27% 1%
 脱毛症 26% NA 25% NA
 口内炎 23% 4% 13% 2%
 神経障害 23% 3% 20% 2%
 呼吸困難 22% 4% 24% 8%
 咳嗽 21% <1% 20% 1%
 発熱 17% <1% 13% <1%
 末梢性浮腫 16% 0% 8% <1%
 便秘 16% <1% 17% 1%
 粘膜炎症 16% 3% 7% <1%
 嘔吐 14% 1% 14% 2%
 流涙増加 13% <1% 4% 0%
 筋肉痛 12% 1% 10% 1%
 関節痛 11% 1% 8% 1%
 背部痛 11% 1% 8% <1%
 腹痛 11% 1% 10% 1%
 味覚異常 11% NA 7% NA
 不眠症 11% <1% 8% <1%
 頭痛 11% <1% 11% 1%
血液毒性 RAM+DOC(n=627) DOC(n=618)
  全グレード グレード≧3 全グレード グレード≧3
好中球数減少 55% 49% 45% 39%
白血球減少 21% 14% 19% 12%
貧血 21% 3% 28% 6%
発熱性好中球減少症 16% 16% 10% 10%
血小板数減少 13% 3% 5% 1%
特に注目すべき有害事象 RAM+DOC(n=627) DOC(n=618)
  全グレード グレード≧3 全グレード グレード≧3
出血 29% 2% 15% 2%
 鼻出血 19% <1% 6% <1%
 消化管出血 3% 1% 2% <1%
 肺出血 8% 1% 7% 1%
   喀血 6% 1% 5% 1%
高血圧 11% 6% 5% 2%
注入に伴う反応 4% 1% 4% 1%
蛋白尿 3% <1% 1% 0%
静脈血栓塞栓症 3% 2% 6% 3%
腎不全 2% <1% 2% <1%
動脈血栓塞栓症 2% 1% 2% 1%
うっ血性心不全 1% 1% 1% <1%
消化管穿孔 1% 1% <1% <1%
5. サブグループ解析(OS)
  RAM+DOC生存期間 DOC生存期間 HR(95%CI) P値
組織型        
非扁平上皮癌(n:465 vs 447) 11.1ヵ月 9.7ヵ月 HR 0.830(0.708-0.972) 0.020
扁平上皮癌(n:157 vs 171) 9.5ヵ月 8.2ヵ月 HR 0.883(0.692-1.127) 0.319
一次治療(プラチナ併用療法)の奏効      
 CR/PR/SD 11.2ヵ月 10.3ヵ月 HR 0.84 (0.71-0.99)  
 PD 8.3ヵ月 6.3ヵ月 HR 0.86 (0.68-1.08)  
結語
本試験はDOC単剤治療に対するRAM+DOC併用療法のOSにおける優越性を証明した試験である。10年以上に渡り二次治療の標準治療であったDOC単剤治療に対し、初めて優越性を示し、扁平上皮癌を含めた非小細胞肺癌における血管新生阻害剤の有効性が示された。
血管新生阻害剤治療による有害事象のリスクが高い患者を適切に除外することで、重度な出血に関連する有害事象を増加させることなく治療を行うことが可能であった。
RAM+DOC併用療法はDOC単剤治療に代わる2次治療の標準治療となり得る。
執筆:横浜市立大学附属病院 呼吸器内科学 堂下 皓世 先生
監修:順天堂大学大学院 医学研究科 呼吸器内科学 助教 朝尾 哲彦 先生

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