肝細胞癌 IMbrave150 trial update

Updated efficacy and safety data from IMbrave150: Atezolizumab plus bevacizumab vs. sorafenib for unresectable hepatocellular carcinoma

Ann-Lii Cheng , Shukui Qin , Masafumi Ikeda, et al, J Hepatol. 2022 Apr;76(4):862-873. [PubMed]

対象疾患 治療ライン 研究の相 主要評価項目 実施地域 日本の参加
肝細胞癌 一次治療 第3相 全生存期間
無増悪生存期間
国際 あり

試験名 :IMbrave150 trial

レジメン:アテゾリズマブ+ベバシズマブ vs ソラフェニブ

登録期間:2018年3月15日〜2019年1月30日

背景

IMbrave150試験は、切除不能進行肝細胞癌の一次薬物療法としてアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法とソラフェニブの有用性および安全性を比較することを目的とした非盲検無作為化比較試験である。一次解析時(追跡期間中央値8.6カ月後)において、アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法がソラフェニブと比較して全生存期間(Overall Survival : OS)および無増悪生存期間(Progression Free Survival:PFS)の有意な延長を実証し、切除不能な肝細胞癌の第一選択治療として70カ国以上で承認された。本論文では、12ヶ月の追加追跡調査後の最新データを報告する。

対象と方法

IMbrave150試験は全身薬物療法歴のない切除不能な肝細胞癌患者を、アテゾリズマブとベバシズマブ15mg/kgを3週間ごとに静脈内投与する群、またはソラフェニブ400mgを1日2回経口投与する群に2:1で無作為に割り付けた。主要評価項目はOSと独立評価機関の判定により評価されたRECIST v1.1によるPFSであった.副次評価項目は客観的奏効率(Objective Response Rate:ORR)、奏効期間(Duration Of Response:DOR)であった。主な適格基準は局所進行性または転移性および/または切除不能な肝細胞癌、ECOG-PSが0または1、Child-Pugh分類A、これまでに全身薬物療法を受けていない18歳以上の患者であった。主な除外基準には、自己免疫疾患の病歴、B型肝炎およびC型肝炎ウイルスの同時感染、出血または出血のリスクが高い未治療または治療が不十分な食道胃静脈瘤を有する患者であった。

結果

患者背景

2018年3月15日から2019年1月30日までに、501人の患者が登録され、アテゾリズマブ+ベバシズマブ群(336例)またはソラフェニブ群(165例)に無作為に割り付けられた。患者背景は両群間で差はなかった。本解析は2020年8月31日で実施され、両群の観察期間中央値は15.6ヶ月、アテゾリズマブ+ベバシズマブ群は17.6 (0.1-28.6ヶ月)、ソラフェニブ群は10.4カ月(0~27.9ヶ月)であった。アテゾリズマブ+ベバシズマブ群では336人中60人(18%)、ソラフェニブ群では165人中5人(3%)が治療を継続していた。試験治療を中止した主な理由は死亡で、各群でそれぞれ179人(53%)と99人(60%)であった。後治療はアテゾリズマブ+ベバシズマブ群(36%)よりもソラフェニブ群(52%)でより多く受けていた。両群で最も多く受けた後治療はチロシンキナーゼ阻害剤で、各治療群でそれぞれ108人(32%)と54人(33%)であった。免疫療法は各群でそれぞれ11人(3%)と43人(26%)であった。

有効性

主要評価項目であるOS中央値はアテゾリズマブ+ベバシズマブ群で19.2ヶ月(95%CI 17.0〜23.7ヶ月)、ソラフェニブ群で13.4ヶ月(95%CI 11.4〜16.9ヶ月)であり、層別ハザード比は0.66(95% CI 0.52-0.85; p <0.001)であった。またPFS中央値はアテゾリズマブ+ベバシズマブ群で6.9カ月(95%CI 5.7~8.6)、ソラフェニブ群では4.3カ月(95%CI 4.0~5.6)であり、層別ハザード比は0.65(95%CI 0.53〜0.81; p <0.001)であった。12ヵ月後と18ヵ月後の生存率は、アテゾリズマブ+ベバシズマブ群ではそれぞれ67%と52%、ソラフェニブ群では56%と40%であった。ORRはアテゾリズマブ+ベバシズマブ群で30% (95%CI 25〜35)に対してソラフェニブ群で11%( 95%CI 7-17)であり、DORはアテゾリズマブ+ベバシズマブ群で18.1カ月(95%CI 14.6-評価不能)に対してソラフェニブ群で14.9カ月(95%CI 4.9-17.0)であった。全体的に一次解析時と同様に、ソラフェニブ群と比較してアテゾリズマブ+ベバシズマブ群で良好な有効性が示された。

OSの部分集団解析結果は、成因が非ウィルス性のサブグループを除き、アテゾリズマブ+ベバシズマブ群で良好であった。しかし、PFSとORRの部分集団解析結果では、非ウィルス性のサブグループでも良好な結果であり、アテゾリズマブ+ベバシズマブの有効性はどの部分集団でも期待できると考えられた。

安全性

全Gradeの有害事象は、アテゾリズマブ+ベバシズマブ群で329人中 322人(98%)、ソラフェニブ群で156人中154人(99%)発生した。Grade 3以上の有害事象は各群でそれぞれ207人(63%)と89人(57%)の患者で発生し、Grade 5のイベントは23人(7%)と9人(6%)の患者で認められた。重篤な有害事象は、各群でそれぞれ160人(49%)と51人(33%)に認められた。治療関連の重篤な有害事象は、各群でそれぞれ76人 23%)と25人(16%)であった。治療関連のGrade 5の有害事象は各群でそれぞれ6人(2%)(胃腸出血、胃潰瘍穿孔、クモ膜下出血、肺炎、肝機能異常、肝損傷)と1人(<1%)(肝硬変)であった。アテゾリズマブ+ベバシズマブ群ではGrade 5の出血関連有害事象が6件(上部消化管出血が5件[胃腸出血3件、食道静脈瘤出血2件]、クモ膜下出血1件)に認められた。上部消化管出血事象5件のうち、初回投与後3ヶ月以内に発生した1件のみが治療関連と判断された。5件はいずれも大血管浸潤を伴っていた。 主な治療関連の有害事象は、アテゾリズマブ+ベバシズマブ群でタンパク尿95人(29%)、高血圧93人(28%)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ増加54人(16%)、疲労54人(16%)であった。ソラフェニブ群では、手掌・足底発赤知覚不全症候群75人(48%)、下痢68人(44%)であった。免疫関連有害事象は、それぞれ249人(76%)と129人(83%)で報告され、最も多かったものは肝炎であり、アテゾリズマブ+ベバシズマブ群の175人(53%)で報告された。 有害事象により治療を中止した患者は、アテゾリズマブ+ベバシズマブ群では72人(22%)(アテゾリズマブとベバシズマブを併用; 34人[10%])、ソラフェニブ群では18人(12%)であった。

結語
  • IMbrave150試験の一次解析時と同様に、切除不能肝細胞癌の一次薬物療法としてソラフェニブ単独療法に対してアテゾリズマブとベバシズマブの併用療法の有用性が堅持された。
  • 安全性については一次解析時に比較し発生率の増加が見受けられたが、治療期間の延長に伴うものと考えられる。
執筆:国立がん研究センター東病院 肝胆膵内科 福士 耕 先生
監修:国立がん研究センター東病院 肝胆膵内科 科長 池田 公史 先生

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