大腸癌 WJOG 6210G

Randomized study of FOLFIRI plus either panitumumab or bevacizumab for wild-type KRAS colorectal cancer-WJOG 6210G.

Shitara K, Yonesaka K, Denda T, et al. Cancer Sci. 2016;107:1843-1850. [PubMed]

対象疾患 治療ライン 研究の相 主要評価項目 実施地域 日本の参加
大腸癌 二次治療 第2相 全生存期間 国内 あり

試験名 :WJOG 6210G

レジメン:FOLFIRI+ベバシズマブ vs FOLFIRI+パニツムマブ

登録期間:2011年4月〜2014年2月

背景

抗VEGF抗体薬と抗EGFR抗体薬は、ともにFOLFOX/FOLFIRIとの併用で切除不能大腸癌の一次・二次治療に用いられるが、適切な治療シークエンスは定まっていない。本試験(WJOG 6210G)は、KRAS exon2野生型症例の二次治療において、FOLFIRI+ベバシズマブとFOLFIRI+パニツムマブを比較するために計画された。また治療選択におけるバイオマーカーの同定が望まれているが、腫瘍組織標本からの繰り返しの採取は困難である。本試験では繰り返し採取可能な血中循環腫瘍DNA(ctDNA)や血清バイオマーカー別のサブグループ解析も同時に行った。

シェーマ

統計学的事項

主要評価項目:全生存期間

本試験は当初、FOLFIRI+ベバシズマブのFOLFIRI+パニツムマブに対する有用性を検討する目的に設計されたが、本試験開始後に発表されたいくつかの無作為化試験の結果を受け、両群の全生存期間(OS)が同程度であることを検討するよう変更を行った。
両群のOSが同程度(ハザード比:1.0)であることを期待して、70%以上の確率でハザード比の点推定地が0.80-1.25に含まれるためには、86イベント・120例が必要とされた。

試験結果:

  • 2011年4月から2014年2月までに121例が登録されたが、各群2例ずつ不適格であったため、それら4例を除いた117例を解析対象集団とした(FOLFIRI+パニツムマブ群 59例、FOLFIRI+ベバシズマブ群 58例)。
  • 2015年8月のデータカットオフ時点で、観察期間中央値はパニツムマブ群で15.4ヶ月、ベバシズマブ群で13.4ヶ月であった。
  • 患者背景に偏りはなかった。
  • 後治療を受けたのはパニツムマブ群で45例(76.3%)、ベバシズマブ群で46例(79.3%)であった。
    抗EGFR抗体薬を使用したのはパニツムマブ群で39.0%、ベバシズマブ群で72.4%であった。
1. 全生存期間(主要評価項目)
  中央値 95% CI HR 1.16     
(95%C.I. 0.76-1.77)
FOLFIRI+パニツムマブ (n=59) 16.2ヶ月 12.5-22.4
FOLFIRI+ベバシズマブ(n=58) 13.4ヶ月 11.1-18.6
2. 無増悪生存期間
  中央値 95%信頼区間 HR 1.14     
(95%C.I. 0.78-1.66)
FOLFIRI+パニツムマブ (n=59) 6.0ヶ月 5.0-7.5
FOLFIRI+ベバシズマブ(n=58) 5.9ヶ月 3.9-7.8
3. 奏効割合
  奏効割合 p<0.001
FOLFIRI+パニツムマブ (n=59) 46.2%
FOLFIRI+ベバシズマブ(n=58) 5.7%
4. Grade 3以上の有害事象 (CTCAE ver.4.0)
  FOLFIRI+パニツムマブ (n=61) FOLFIRI+ベバシズマブ(n=60)
白血球減少症 11 (18.0%) 17 (28.3%)
好中球減少症 30 (49.2%) 28 (46.7%)
貧血 3 (4.9%) 7 (11.7%)
血小板減少症 1 (1.6%) 3 (5.0%)
発熱性好中球減少症 2 (3.3%) 3 (5.0%)
口内炎 13 (21.3%) 4 (6.7%)
ざ瘡様皮疹 10 (16.4%) 0
低マグネシウム血症 7 (11.5%) 0
5. サブグループ解析: ctDNAにおけるRAS/BRAF status別 全生存期間
  RAS or BRAF変異型 (n=19) RAS/BRAF野生型 (n=90)
  n 中央値 95%信頼区間 ハザード比 n 中央値 95%信頼区間 ハザード比
FOLFIRI+パニツムマブ 8 5.4ヶ月 3.6-7.1 0.42
(95%C.I. 0.15-1.12)
46 18.9ヶ月 15.6-26.8 1.21
(95%C.I. 0.74-1.99)
FOLFIRI+ベバシズマブ 11 8.2ヶ月 6.0-13.7 44 16.1ヶ月 12.7-21.1
6. サブグループ解析: 血清VEGF-A別 全生存期間
  VEGF-A低値 (n=54) VEGF-A高値 (n=55)
  n 中央値 95%信頼区間 ハザード比 n 中央値 95%信頼区間 ハザード比
FOLFIRI+パニツムマブ 30 22.4ヶ月 16.2-29.3 1.92
(95%C.I. 0.98-3.76)
24 10.7ヶ月 9.2-16.9 0.67
(95%C.I. 0.37-1.21)
FOLFIRI+ベバシズマブ 24 13.4ヶ月 11.1-20.1 31 13.7ヶ月 9.8-21.9
  • 他の血清バイオマーカー(HGF、HER2、エピレグリンなど)で治療効果予測因子となりえるものはなかった。
結語
KRAS exon2野生型の切除不能大腸癌二次治療において、FOLFIRI+ベバシズマブとFOLFIRI+パニツムマブの治療効果は同程度であった。
またctDNAにおけるRAS/BRAF変異はパニツムマブのネガティブな効果予測因子であった。
VFGF-Aはベバシズマブと抗EGFR抗体を使い分けるバイオマーカーになり得るかもしれない。
執筆:静岡県立静岡がんセンター 消化器内科 レジデント 井上 博登 先生
監修:静岡県立静岡がんセンター 治験管理室 部長、消化器内科 医長 山﨑 健太郎 先生

臨床試験サマリ一覧へ