大腸癌 AVF2107g

Bevacizumab plus irinotecan, fluorouracil, and leucovorin for metastatic colorectal cancer

Hurwitz H, Fehrenbacher L, Novotny W, et al. N Engl J Med. 2004; 350: 2335-22. [PubMed]

対象疾患 治療ライン 研究の相 主要評価項目 実施地域 日本の参加
大腸癌 一次治療 第3相 全生存期間 国際 なし

試験名 :AVF2107g

レジメン:IFL+BEV vs FU/LV+BEV vs IFL+placebo

登録期間:2000年9月〜2002年5月

背景

血管内皮増殖因子(VEGF)は血管新生を調整する重要な役割をもち、抗VEGF抗体は腫瘍細胞株を免疫不全マウスに移植したモデルにおいて腫瘍増殖を抑えることが示された。抗VEGF抗体薬であるベバシズマブ(BEV)は、直接的な血管新生抑制効果に加えて、腫瘍の血管構造を変化させたり腫瘍における間質圧を抑えたりすることで薬物伝達を改善すると考えられている。BEVと5-FU/LVとの併用療法が奏効割合を改善することが第2相試験(AVF0780g)で示されたことから、一次治療としてのIFL(イリノテカン+急速静注5-FU/LV)+BEV併用療法の有効性を検証する第3相試験(AVG2107g)が実施された。

シェーマ

統計学的事項

主要評価項目:全生存期間

IFL+placebo群を対照としてIFL+BEV群の生存期間のハザード比が0.75となることを検証する優越性試験(両側α=0.05、検出力=80%)
必要イベント数は385イベント。

試験結果:

  • 2000年9月〜2002年5月の間に3カ国、164施設より923例が登録された。
  • 313例(IFL+BEV 103例、FU/LV+BEV 110例、IFL+placebo 100例)が登録された後に中間解析が実施され、IFL+BEV群の安全性に問題がないことが確認されたことから、以降FU/LV+BEV群への登録は中止された。
  • 主要評価項目である全生存期間のITT解析対象は、IFL+BEV 402例、IFL+placebo 411例であった。
  • 患者背景に大きな隔たりはなかった。
  • データカットオフは1998年12月1日、観察期間中央値は27.7ヶ月。
1. 全生存期間(主要評価項目)
  中央値 HR 0.66 
P < 0.001
IFL+BEV 20.3ヶ月
IFL+placebo 15.6ヶ月
2. 無増悪生存期間
  中央値 HR 0.54 
P < 0.001
IFL+BEV 10.6ヶ月
IFL+placebo 6.2ヶ月
3. 奏効割合
  奏効割合 CR PR P = 0.004
IFL+BEV 44.8% 3.7% 41.0%
IFL+placebo 34.8% 2.2% 32.6%
4. 治療期間
  中央値
IFL+BEV 40.4週
IFL+placebo 27.6週
5. 奏効期間(奏効例のうち、増悪なく生存)
  中央値 HR 0.62 
P = 0.001
IFL+BEV 10.4ヶ月
IFL+placebo 7.1ヶ月
6. 二次治療(オキサリプラチン)を行ったサブグループの全生存期間
  中央値
IFL+BEV 25.1ヶ月
IFL+placebo 22.2ヶ月
7. 有害事象
  IFL+BEV IFL+placebo
全イベント(Grade 3/4) 84.9%* 74.0%
入院を要したイベント 44.9% 39.6%
治療中止となったイベント 8.4% 7.1%
有害事象関連死 2.6% 2.8%
白血球減少(Grade 3/4) 37.0% 31.1%
下痢(Grade 3/4) 32.4% 24.7%
高血圧
   全Grade
   Grade 3
 
22.4%*
11.0%*
 
8.3%
2.3%
血栓症 19.4% 16.2%
深部静脈血栓症 8.9% 6.3%
肺塞栓 3.6% 5.1%
出血(Grade 3/4) 3.1% 2.5%
蛋白尿
   全Grade
   Grade 2
   Grade 3
 
26.5%
3.1%
0.8%
 
21.7%
5.8%
0.8%
消化管穿孔 1.5% 0.0%

*P < 0.01

8. 早期死亡(治療開始から60日以内)
  割合
IFL+BEV 3.0%
IFL+placebo 4.9%
結語
切除不能進行再発大腸癌に対する初回治療として、IFL+BEV群はIFL+placebo群に対し、全生存期間、および無増悪期間、奏効割合で有意に優れていたことから、ベバシズマブ+フルオロピリミジン併用療法をベースとした治療は新たなオプションと考えられる。
執筆:静岡県立静岡がんセンター 消化器内科 レジデント 瀧浪 将貴 先生
監修:静岡県立静岡がんセンター 治験管理室 部長、消化器内科 医長 山﨑 健太郎 先生

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