胆道癌 ClarIDHy

Ivosidenib in IDH1-mutant, chemotherapy-refractory cholangiocarcinoma (ClarIDHy): a multicentre, randomized, double-blind, placebo-controlled, phase 3 study

Ghassan K Abou-Alfa, Teresa Macarulla, Milind M Javle et al.Lancet Oncol. 2020 Jun;21(6):796-807 [PubMed]

対象疾患 治療ライン 研究の相 主要評価項目 実施地域 日本の参加
進行胆道癌 二次治療以降 第3相 無増悪生存期間 国際(6カ国) なし

試験名 :ClarIDHy

レジメン:イボシデニブ vs プラセボ(増悪時にクロスオーバーを許容)

登録期間:2017年2月〜2019年1月

背景

イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)は、肝前駆細胞の分化、増殖を通して、肝内胆管癌の発癌に関係することが示されており、胆道癌では13%の症例に変異を認めると報告されている。イボシデニブ(AG-120)はIDH1遺伝子変異蛋白を阻害する薬剤であり、胆管癌を含む固形癌患者を対象として第1相試験が行われ、良好な忍容性と臨床効果が認められたため、今回のClarIDHy試験が計画された。

シェーマ

統計学的事項

主要評価項目:無増悪生存期間

プラセボ群の無増悪生存期間中央値(PFS)を3ヶ月、イボシデニブ群のPFSのハザード比を0.5と仮定し、有意水準片側2.5%、検出力96%と設定し、PFSとして、131イベントが必要と算出された。必要症例数は186例と算出された。

試験結果:

  • 2017年2月から2019年1月までに全体で780人が次世代シーケンシング(NGS)スクリーニングを受け、230人が陽性。そのうち185人が登録された(イボシデニブ群124人、プラセボ群61人)。
  • 患者背景は、以下に示す通りで両群間の差は認めなかった。
  イボシデニブ群 プラセボ群
男性, n(%) 44(35) 24(39)
年齢, 中央値(範囲) 61(33-81) 63(40-83)
前治療歴, n(%)    
 1レジメン 66(53) 33(54)
 2レジメン 58(47) 28(46)
ECOG-PS    
 0 49(40) 19(31)
 1 74(60) 41(67)
肝内胆管癌, n(%) 111(90) 58(95)
IDH1遺伝子変異    
 R132C 84(68) 45(74)
 R132L 21(17) 7(11)
 R132G 17(14) 6(10)
  • イボシデニブ群、プラセボ群ともに肝内胆管癌が90%以上を占めていた。
  • IDH1遺伝子変異の中で、R132Cの最も頻度が高かった。
  • プラセボ群のうち35人(57%)が病勢増悪後にクロスオーバーしてイボシデニブの投与を受けた。
1. 無増悪生存期間(主要評価項目, 独立中央画像判定機関による)

  中央値 95%信頼区間 HR 0.37     
(95%C.I. 0.25-0.54)
p<0.001     
イボシデニブ群 2.7ヶ月 1.6-4.2
プラセボ群 1.4ヶ月 1.4-1.6
  • 無増悪生存期間における観察期間中央値は6.9ヶ月であった。無増悪生存期間中央値はイボシデニブ群2.7ヶ月、プラセボ群1.4ヶ月、ハザード比0.37(95%信頼区間 0.25-0.54, p<0.001)とイボシデニブ群の優越性が示された。
2. 全生存期間(Intention-to-treat(ITT)解析とThe rank-preserving structural failure time(RPSFT)-adjusted法)

  中央値 95%信頼区間
HR 0.69(95%C.I. 0.44-1.10)
p=0.060
イボシデニブ群 10.8ヶ月 7.7-17.6
プラセボ群 9.7ヶ月 4.8-12.1
プラセボ群(RPSFT-adjusted) 6.0ヶ月 3.6-6.3 HR 0.46(95%C.I. 0.28-0.75)
p=0.0008
  • ITT解析では、イボシデニブ群のプラセボ群に対する全生存期間の優越性は示せなかった(HR 0.69(95%C.I. 0.44-1.10)p=0.060)。
  • Rank-preserving structural failure time(RPSFT)-adjusted法を用いて、プラセボ群のイボシデニブへのクロスオーバーの影響を除去した解析では、イボシデニブ群のプラセボ群に対する全生存期間の優越性が明らかとなった(HR 0.46(95%C.I. 0.28-0.75)p=0.0008)。
3. 奏効割合(独立中央画像判定機関による)

  イボシデニブ(N=124) プラセボ(N=61)
最良総合効果    
 PR 3(2) 0
 SD 63(51) 17(28)
 PD 41(33) 35(57)
 Unknown 2(2) 0
 NE 1(1) 1(2)

PR=partial response, SD=stable disease, PD=progressive disease, NE=not evaluable

  • 病性制御割合は53% vs 28%でありイボシデニブ群で良好だった。
4. 有害事象(CTCAE ver.4.03)
  イボシデニブ群(N=121) プラセボ群(N=59)
  全Grade Grade 3以上 全Grade Grade 3以上
嘔気 43 (35%) 3 (2%) 15 (26%) 1(2%)
下痢 37 (31%) 0 9 (15%) 0
倦怠感 32 (26%) 4 (3%) 10 (17%) 1 (2%)
腹痛 26 (21%) 3 (2%) 8 (14%) 1 (2%)
腹水 25 (20%) 9 (7%) 9 (15%) 4 (7%)
食欲不振 23 (19%) 2 (2%) 11 (19%) 0
貧血 18 (15%) 4 (3%) 3 (5%) 0
AST上昇 13 (11%) 6 (5%) 3 (5%) 1 (2%)
ビリルビン上昇 12 (10%) 7 (6%) 4 (7%) 1 (2%)
  • イボシデニブ群の忍容性は良好だった。
  • 治療関連死はなかった。
結語
本試験の結果、イボシデニブ群ではIDH1遺伝子変異を有する進行胆道癌に対して、プラセボ群に対する無増悪生存期間の優越性を示した。また、全生存期間も良好な結果を示した。
執筆:国立がん研究センター東病院 肝胆膵内科 澁木 太郎 先生
監修:神奈川県立がんセンター 消化器内科 肝胆膵 部長 上野 誠 先生

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