第2回座談会
-MSI-H大腸癌に対するNivolumab+Ipilimumab併用療法への期待-

ついに大腸癌治療にも本格的な免疫療法の時代がやってきた——。
Nivolumab+Ipilimumab併用療法は大腸癌治療をどう変えるのか。臨床ではそれを、どう使っていけばよいのか。
第一線で活躍する4人の先生方にNivolumab+Ipilimumab併用療法に対する期待を述べていただきました。

はじめに

辻先生:
大腸癌の薬物療法としましては、まず初めに殺細胞抗がん薬、その後、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が開発・導入され、療法のStrategyも大きく変わってきました。最近では遺伝子解析などの進歩でICIが有効なタイプも分かってきたり、がん遺伝子パネル検査の保険償還など、治療環境が整ってきました。
本邦でもMSI-H CRCに対しNivolumab+Ipilimumab併用療法が承認申請され、ついに大腸癌治療にも本格的な免疫療法の時代がやってきた、という状況です。
本日はこの分野の“達人”の先生方にお集まりいただきました。議論が非常に楽しみでございます。

まずは大腸癌でいま得られているICIのデータを山﨑先生から簡単にご紹介いただきます。
山﨑先生、お願いいたします。
山﨑先生:
はい。ミスマッチ修復機能欠損を有する大腸癌(MMR-D大腸癌)におけるICIについて簡単にサマライズします。

【Summary】MMR-D大腸癌に対するNivolumab+Ipilimumab併用療法

MMR-D “固形癌”に対するPembrolizumab

2012年に抗PD-1抗体の臨床データが初めて報告されて以降、多くの癌腫で有効性を示してきましたが、大腸癌ではなかなかその恩恵を受けられない状況が続いていました。そのような中で、ミスマッチ修復機能欠損を有する(MMR-D)大腸癌を含む固形癌に対してPembrolizumabの有効性が示されました。少数例の報告ではあったものの、非常に良好な成績を示したことから、日本でも2018年12月にPembrolizumabの適応がMSI-H固形癌(※)にも拡大されました。
※:がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)1)

昨年(2019年)、解析対象を357例に増やしたフォローアップデータが発表されましたが、それでもMMR-D固形癌既治療例に対して単剤療法で3割を超える奏効と5割を超える病勢制御が得られていました(各々34%、52%)。2)
さらに、奏効例に関しては、非常に長期の腫瘍制御、ICIの特徴でもあるいわゆるDurable responseが得られているということが、MMR-D固形癌でも示されました。

大腸癌でのMSI-Hの割合

大腸癌におけるMSI-Hの頻度については、各国、各Stageで様々な数値が報告されていますが、国内の数値としては、SRLで実施された検査結果からの報告での3.83%3)が最も信頼性が高いと考えています。これはMSI検査承認後の25,000例を超えるデータを用いた解析のため、国内の切除不能進行再発大腸癌における真の値に近いのではないか、と思っています。

MMR-D “大腸癌”初回治療例に対するPembrolizumab

現在、PembrolizumabのMMR-D大腸癌初回治療例に対する有効性を検証するための試験が行われています。最も進んでいるのがKEYNOTE-177試験4)です(図1)。MMR-Dを有する切除不能大腸癌の初回治療例を対象とした、Pembrolizumab vs 標準治療の直接比較試験になります。

図1

(編集注記:座談会開催後、2020年4月2日付で米国MSD社よりco-primary endpointのPFSがPembrolizumab群で有意に延長とのプレスリリースがありました。)

MMR-D 大腸癌に対するNivolumab

さて、もうひとつ注目されているICIが、同様の抗PD-1抗体であるNivolumabです。MMR-D大腸癌を対象に、CheckMate 142試験(第2相試験, NCT02060188)が行われました(図2)。

図2

1つめが、既治療例に対するNivolumab単剤療法。
2つめが、既治療例に対するNivolumab+Ipilimumab併用療法。
3つめが、初回治療例に対するNivolumab+Ipilimumab併用療法。

図3